ぼっちカメラ手記

カメラや写真に関する色々を綴ります

page. 4 フルサイズ v.s. APS-C

K, Takuです。

 

センサーサイズの話をば。

一眼レフ然り、ミラーレス一眼然り、いわゆる「一眼カメラ」と呼ばれるカメラにおいてはセンサーの大きさが重要なスペックの一つとして語られます。最近ではコンデジでもハイエンドなものでは大きなサイズのセンサーを搭載したものが増えています。かつては「画素数戦争」の時代もありましたが、今ではセンサーサイズ戦争?のような状態に近いかもしれません。

 

さて、特にレンズ交換式の一眼カメラでは、「フォーサーズ」や「APS-C」、「フルサイズ」などが有名どころですね。一般的には「フルサイズが最強!その他は下位互換!」などと叫ばれている印象が強いのですが、「本当にそうなのか?センサーが大きいことがすなわち正義なのか?」という懐疑があります。この記事では特に代表的なフルサイズとAPS-Cを対比し、APS-Cに味方する形で、センサーサイズが小さいことによる長所を書いてみたいと思います。

 

※当記事では、フルサイズを24mm×36mm, APS-Cを15.6mm×23.5mmとして計算します。特にAPS-Cは各社各時代によって多種多様なサイズがありますが、取り急ぎその値で。

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Fig. 0 フルサイズとAPS-Cのスケール 

 

 

1. APS-Cの方が遠くを撮れる

いろいろと語弊のある見出しであること重々承知ですが、35mm換算で1.5倍するアレの事です。
原理としては、センサーサイズが小さい方が画角が狭くなることに起因します。

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Fig. 1 フルサイズとAPS-Cの画角の関係。同じ焦点距離のレンズを使用したとき、APS-Cのほうが画角が狭くなる:θ1>θ2 

 

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Fig. 2 フルサイズとAPS-Cにおける焦点距離と画角の関係。Fig.1-1で図示した通り、ある決まった焦点距離のレンズを使った時に大きな画角を取るのはフルサイズである。例えば、焦点距離10mmのレンズを使用した場合、フルサイズの画角は約130°である(赤い点)。一方で、同じ焦点距離10mmのレンズをAPS-Cで使用した場合の画角はといえば、約110°となる。それでは、約110°の画角をフルサイズ機によって実現しようとした場合、何mmのレンズが必要なのかといえば、赤い矢印をたどっていくとわかる通り、15mmであることがわかる。つまり、焦点距離10mmのレンズをAPS-Cサイズのボディで使用すると、見かけ上15mmの画角が得られる、ということになる。すなわち、35mm換算で1.5倍、という話が浮き彫りになってくる。(なんかもっと分かりやすくて的確なアプローチがある気がして仕方ありません。)

 

ということで、APS-C機を使用することでレンズの焦点距離を1.5倍にして使用できることがわかりました。ではそれの何が良いのかといえば、とにかく機材が安く済むという点があります。ただでさえ馬鹿みたいに高い交換レンズ、超望遠の領域ともなると、ちょっといいレンズを買おうとすると20万円、30万円は当たり前。100万円オーバーも平気で出てくる世界です。 

 例えばキヤノン単焦点レンズ。600mm/F4は137万円します。

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キヤノン:EF600mm F4L IS II USM|概要

 

APS-Cサイズで使用することを前提として600mmの画角を得るためには400mmで良いわけですから、なんと90万円で済みます!

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キヤノン:EF400mm F4 DO IS II USM 概要

 

40万円以上の節約になりますね!ハイエンドボディが一つ買えます。
価格だけでなく、レンズの大きさや重量についても小さく抑えられます。
以上のように、「同等の画角を得る」という観点だけで考えた場合、APS-Cの方が様々な意味で軽くて済むわけですね。

 

 

2. APS-Cの方がパンフォーカスを作りやすい

Fig. 2 を再度見てみます。

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グラフからわかる通り、同じ画角を得るために必要な焦点距離は、APS-Cの方が短いことがわかります。例えば、80°の画角で撮影したいと思った場合、フルサイズなら約25mmが、APS-Cなら約17mmが対応することになります。さて、経験上ご存じの通り、同じF値、同じ撮影距離の時には焦点距離が短い方がボケ量が少なくなります。すなわち、同じ画角で撮影したときにそもそもレンズの性質からしてすぐにパンフォーカスに到達できるのは、APS-Cのボディを使った場合になるわけです。
ということで、風景写真は広角レンズでパンフォーカス!という撮り方をする際にも、必ずしもフルサイズがベストと断言することはできないと思っています。

 

 

3. APS-Cの方がレンズのおいしい部分を使える

FIg. 1を見ていただければわかる通り、APS-Cサイズでの撮影というのは、フルサイズの中央部分をクロップして撮影していることとほとんど同義です。
レンズは多くの場合中央部分の描写が良く、周辺にいくに従って解像が下がったり収差が出てきたりします。すなわち、フルサイズ用に設計されたレンズをAPS-C機で使用することにより、レンズ中央部のおいしい部分だけを使用することができます。

 

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Fig.3 SEL85F18とSEL85F14GMのMTF. SEL85F18のMTFは、橙色の線がF8を示す。SEL85F14GMはF8でのMTFを示す。

SEL85F18 | デジタル一眼カメラα(アルファ) | ソニー

SEL85F14GM | デジタル一眼カメラα(アルファ) | ソニー

例としてソニーEmountレンズを挙げます。SEL85F18は最近発売されたポートレート用無印レンズ。値段は約7万円。一方SEL85F14GMは、かのGマスターレンズ。値段は約22万円。約3倍の差がありますね。MTFを見てみても差がわかります。さて、もちろん両方ともフルサイズ用のレンズなわけでありますが、ここで仮にSEL85F18をAPS-Cで使用したとして、その場合のMTFが見かけ上どのようになるか、グラフをいじくってみました。

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Fig.4 SEL85F18の横軸をAPS-Cサイズに合うように加工。(レンジを0-21mmから0-17mmに変更)

フルサイズで使用した場合に像高21mmでは約70%までコントラストが落ちていたSEL85F18でしたが、APS-Cサイズでの使用を前提とすると、像高17mm付近でも80%を下らず、85F14GMと似た形状に収まっているのがわかります。レンズの「おいしい部分」を使えていることがわかりますね。

※もちろん、MTFだけですべてを語れるわけではありません。ましてやGマスターレンズ、ボケ具合や色味はもちろん、その他諸々レンズのあらゆる特性を最高に磨き上げたレンズですから、「APS-C機なら85F18を使えばGマスターレンズ相当のものが手に入るんだ!」と言う気は毛頭ありません。あくまで、フルサイズレンズをAPS-C機で使うと中央部の描写がいい部分を使用できる!ということを表現するために例として挙げました。

 

4. APS-C機は実はかなりの高画素

さて、上記に挙げてきた3つのAPS-Cの利点、よく考えてみればすべて「フルサイズで撮影してからクロップすれば実現できること」だと思いませんか。その通りです。その通りなのですが、クロップすると事実上の画素数が落ちることを考慮に入れて考えないといけません。

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Fig. 0 フルサイズとAPS-Cのスケール(再掲)

相似比が24:15.6=20:13なので、面積比は400:169です。つまり、フルサイズで撮影した写真からAPS-Cをクロップすると画素数は169/400まで落ちることになります。裏を返せば、ある画素数APS-C機で撮影した写真は、400/169倍した画素数をもつフルサイズ機で撮影した写真からクロップすることと同義です。

例えば、α6500の有効画素数は2420万ですが、この画素数をフルサイズのクロップからで実現しようとすると、5700万画素必要なことになります。α7RM2ですら4240万画素ですから、それでも足りないことになるわけですね。つまり、これまで挙げてきたAPS-Cの利点に対して、「フルサイズからクロップすればいい」の一言で片づけるのは早計であることがわかります。

α6500 | デジタル一眼カメラα(アルファ) | ソニー

 

 

 

以上のことから、フルサイズはAPS-Cの完全上位互換ではない、ということを主張します。APS-CAPS-Cで、そのサイズでないと撮れない写真もあるわけです。決してフルサイズの廉価版という側面だけではないのです。同様に、フォーサーズに対しても同様のことが言えます。

結局、自分がどんな写真を撮りたいか、そのためにどんな機材が最適かを逐次考えて、良いコンディションで撮影に臨むことが重要なのではないでしょうか。

かつて画素数戦争の時代には画素数の多いことが正義で、それだけをアピールして製品を売っている時代がありましたが、今となっては高画素であることが必ずしもいいことだけではないことは常識となっています。同様に、センサーサイズも大きければ良いという訳ではないということが浸透する日がそのうち来ると思っています。

 

ちなみに、今回挙げた1~4のAPS-Cの利点、特に1, 2, 4については、言い方を変えればすぐにフルサイズの利点に対する言及に様変わりします。カメラの性能はあらゆる面でバーターとなるものが多いです。そのあたりを踏まえてもやはり、それぞれ撮りたい写真に対してどういった機能性能でアプローチしていくかを考えて機材選びする必要があると思います。

 

 

それでは。