ぼっちカメラ手記

カメラや写真に関する色々を綴ります

page. 17 RAW現像とJPEG撮って出し 第二回「RAW/JPEG to JPEG ~Dレンジとレタッチ耐性~」

 

Takuです。

 

 RAW現像とJPEG撮って出しの話、第二回です。第一回では、そもそもいわゆるRAW現像とJPEG撮って出しとでデータの作られ方がどのように違うのかを説明しました。まだ読まれていない方はぜひ目を通していただけると幸いです。

botch-camera.hatenablog.com

 

第2回「RAW/JPEG to JPEG ~Dレンジとレタッチ耐性~」
 

 さて、第一回の結論は次のようなものでした。すなわち、RAW現像とJPEG撮って出しの違いは、絵作りをメーカーに任せるか、撮影者が行うかである、ということです。それを踏まえて今回の記事では、「絵作り」という観点においてJPEGをレタッチすることとRAWデータを現像することとの間にどのような違いがあるのかを考えていきたいと思います。

 

 先日、鎌倉の由比ヶ浜に行ってきました。夕暮れ時だったのですが天気も良く、夕焼けの橙色から夜の青色へのグラデーションが綺麗に出ており、かつ沈みかけの太陽が眩しいながらもよく見える、美しい景色でした。その時撮影した写真がこちらです。

f:id:K_Taku:20180120222455j:plain

 

 RAW現像しています。なぜなら、私の見た光景は「夕焼けの橙色から夜の青色へのグラデーションが綺麗に出ており、かつ沈みかけの太陽が眩しいながらもよく見える」という景色だったのですが、JPEG撮って出しではそれを表現することが出来なかったためです。ではそのJEPG撮って出しの絵はどのようなものかといえば、こちら。

f:id:K_Taku:20180120222749j:plain

 

 人の目にはこんな風には映らないわけです。当然ながら、JPEG撮って出し=人の見た感じに近い、というわけではありません。無論、いくらRAW現像で目視に近づけようとしても限界があります。すなわち、写真と見た通りとの間にはどうしてもさが生じてしまいます。写真作品に対しては様々な考え方があると思いますが、「見た感じ通りの絵を作りたい」と考えて撮影されている方は結構いるのではないでしょうか。

 

 写真と目視との間にさが生まれてしまう原因はいくつか考えられますが、特に大きい要因として挙げられるのは「ダイナミックレンジ」と「色域」の二つではないでしょうか。ダイナミックレンジはどれくらい暗い場所からどれくらい明るい場所まで認識できるか、その範囲の事を言います。色域は、どれだけ多彩な色を表現できるか、というようなものでしょうか。とりわけ、ダイナミックレンジの差は強烈に効いていると思っています。人の目は非常に優秀です。カメラのセンサーなんて目に比べたら全然追い付いていないのです。

 というわけで、撮って出しの

f:id:K_Taku:20180120222749j:plain
のような写真では見た目通りの景色の美しさを表現できないため、RAWデータから自分の表現したい絵を作っていきます。そして出来上がるのが
f:id:K_Taku:20180120222455j:plain
このような写真になるわけです。現像にはLightroomを使っていますが、特に弄ることが多いパラメータは「ハイライト」、「シャドウ」、「コントラスト」、「露光量」で、風景では「かすみ除去」機能をよく使用します。

 さて、皆さんご存じの通り、上記パラメータはJPEGでも弄ることが出来ます。本日の主題はそこで、なぜわざわざRAWから編集するのかを簡単に説明したいと思います。

先ほどの写真、変更したパラメータは下記の通り。

//***
露光量・・・+2.45
コントラスト・・・+17
ハイライト・・・-74
シャドウ・・・+57
明瞭度・・・+13
自然な彩度・・・+43
かすみ除去・・・+21
***//

 

上記パラメータをJEPG画像に反映させて出力させたものがこちらの写真。

f:id:K_Taku:20180120225856j:plain

ちなみにRAWから現像したのはこちら。

f:id:K_Taku:20180120222455j:plain

 

違いの分かりやすい部分を切り出してみます。


上:JPEGレタッチ         
下:RAW現像

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f:id:K_Taku:20180120230151p:plain
太陽の輪郭がRAW現像の方がはっきりしているのがわかると思います。

 

上:JPEGレタッチ         
下:RAW現像

f:id:K_Taku:20180120230936p:plain 
f:id:K_Taku:20180120230949p:plain

RAW現像の方が若干明るく、かつ足跡の中のディテールが残っています。

 

 挙げれば切りがないのですが、上記のようにハイライト部分とシャドウ部分には顕著に違いが現れます。

 なぜそのような違いが生じるかといえば、RAWとJPEGとでは保有しているデータのダイナミックレンジが異なるからです。例えばRAWデータは12bit前後の深度で明暗差のデータを持っています。JPEGデータは、RAWデータを8bitまで圧縮して現像、保存してあります。(※rawのbit深度は機種やメーカーによって少しずつ異なります。)

 RAWデータは明るさのデータを豊富に持っている(暗いところから明るいところまで)ため、現像によって好きな部分を選んでJPEGの形に落とし込むことが出来ます。12bitという大きい箱から、8bitという小さい箱に、いろいろ好きなように選んで入れていけるというイメージです。そのため、一見黒潰れ・白飛びしている部分も実はディテールが残っていて、そこを選んで8bitに収めることでJPEGとして表現することが出来ます。

 一方JPEGはもともと8bitであり、編集先のJPEGも8bitなので、余裕がありません。8bitの大きさの箱から8bitの大きさの箱に、寄せ集め方を変えて配置するだけしかできません。なので黒潰れしてる部分は黒潰れしっぱなしですし、白飛びしている部分は白飛びしっぱなしです。

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 一言でいえば、「JPEGをレタッチするよりRAW現像した方が綺麗な絵が出来る」のです。編集に対して融通が利く、とも言えます。要するに表現の幅が広がります

 

 ここから先は個人的な見解になります。写真は自分のイメージを絵によって表現するための手法だと思っています。たとえば景色を写真に収めたいとき、見たままを表現したいかもしれないし、何かをすごく強調した絵として表現したいかもしれません。それは人それぞれです。人が表現したい数だけ正解があるはずです。

 JPEG撮って出しで自分の表現したい絵が作れるなら、それで正解だと思います。ただ、やはりメーカーに任せた現像が自分のイメージ通りの絵を出してくれる確率は低いように思います。これは直感的にですが。

 

 さて、そうなると、なぜJPEG撮って出しに固執する方々がいて、かつRAW現像とJPEG撮って出しという対立構造が生まれてしまうのか、文化的な背景が気になります。なぜなら原理的には対立しえない二項だからです。理由は今回と前回で説明した通り、そもそもどちらもRAW現像は行われていることと、視覚に近い絵は現像ソフトでRAW現像した方が得られやすいからです。

 次回、最終回として、写真文化を少し掘り下げて、なぜ現状のような対立構造が生まれているのかを考察していきたいと思います。ちょっと調べ物が必要になるので、来週か再来週の更新になる予定です。
(2018.2.24追記:思っていた以上に根深そうな話であることが分かりました。写真史と写真技術を、その黎明から追いかけないと理解できなさそうです。簡単にまとめられない様子なので、第三回は出来次第更新とさせてください。)

 

それでは。